私たちは、健エピネットで4年間活動してきました。そこから、この「エピジェネティック発達支援研究会」へとたどり着きました。その道のりを少しご紹介する、健エピネット研究会の9本の動画とそのダイジェストをここに入れておきます。
1 生命とは何か
中村桂子先生 講演
生命を遺伝子や分子だけに還元するのではなく、長い生命の歴史とつながりの中に存在するものとして考える視点です。
エピジェネティクスもまた、DNAだけを独立して見るのではなく、生命と環境との相互作用を考える学問です。
「生命とは何か」という根源的な問いは、その後の健エピネットの活動を考える重要な出発点の一つとなりました。
生命を理解するとは、DNAを理解することだけなのでしょうか。
KEYWORDS
生命誌/生命観/生命科学/環境/遺伝子/エピジェネティクス
2 「触れる」という環境
山口創先生 講演
【YouTube動画埋め込み】
https://youtu.be/DV1nUaVWoi0
人間、とりわけ発達期の子どもにとって「環境」とは、化学物質、栄養、温度などの物理的環境だけではありません。
抱かれること、触れられること、人と身体的に関わることもまた重要な環境です。
触覚と脳、オキシトシン、発達障害という視点から、人と人との身体的な関わりが発達に持つ意味を考えました。
このテーマは、その後の健エピネットにおけるタッチケア、身体性、感覚からの発達支援という問題意識へつながっています。
人との触れ合いという「環境」は、子どもの脳と発達をどこまで変えるのでしょうか。
KEYWORDS
触覚/オキシトシン/発達障害/タッチケア/身体性/親子関係
3 教育をエピジェネティクスから考える
久保田健夫先生 講演
【YouTube動画埋め込み】
https://youtu.be/tzCzy48RYY8
子どもには、自ら発達しようとする力がある。
そして教育者の重要な役割の一つは、その力が発揮される環境を整えることである。
モンテッソーリ教育が長年の教育実践から重視してきたこうした考え方を、脳発達やエピジェネティクスなどの現代生物学から考えます。
教育とエピジェネティクスを直接対話させるこの試みは、その後の「エピジェネティクス発達支援研究会」の構想につながる重要な契機となりました。
優れた教育実践の中には、現代の発達神経科学やエピジェネティクスから再検討できるものがあるのではないでしょうか。
KEYWORDS
モンテッソーリ教育/教育環境/脳発達/エピジェネティクス/発達支援
4 身体から発達を支援する
支援学級等でのASDに対する運動療法・タッチセラピープログラムの構築
【YouTube動画埋め込み】
https://youtu.be/ZXQvYtxUW3E
ASDの子どもへの支援を、認知や行動への働きかけだけではなく、運動・身体感覚・触覚という「身体側」から考える試みです。
運動には身体機能だけでなく、脳機能、情動、社会性などへの作用が期待されます。
一方、発達特性をもつ子どもにとって、運動そのものが負荷やストレスになる可能性もあります。
そこで、運動による刺激と、タッチによる安心感や身体感覚への働きかけを組み合わせた、
「運動療法+タッチセラピー」
という発達支援プログラムを、支援学級などの実際の教育現場で実施する可能性を検討しました。
運動、触覚、身体感覚への働きかけによって、その子が持つ能力や個性をより生き生きと発揮できる環境をつくることはできないでしょうか。
KEYWORDS
ASD/運動療法/タッチセラピー/支援学級/身体性/脳可塑性/発達支援
5 発達障害から神経多様性へ
2024年8月17日 健エピネット研究会
【YouTube動画埋め込み】
https://youtu.be/-dVtHYVWaQk
発達障害を「正常な発達からの逸脱」としてだけではなく、人間の脳や認知の多様性という視点から考えました。
困難を軽減するための支援は重要です。
しかし、それと同時に、
「できないこと」ではなく「異なること」に注目すると、何が見えてくるのでしょうか。
認知、感覚、注意、記憶、興味などの違いを、その人固有の特性として理解するニューロダイバーシティという考え方は、健エピネットの発達支援観を大きく広げました。
発達支援は、定型的な発達へ近づけることだけを目的とする必要があるのでしょうか。
KEYWORDS
発達障害/神経多様性/ニューロダイバーシティ/個性/認知特性
6 感覚から脳と発達を考える
2024年9月21日 健エピネット研究会
【YouTube動画埋め込み】
https://youtu.be/N7sRxRETKcs
発達を認知や言語だけから考えるのではなく、身体を通して入ってくるさまざまな感覚から考える取り組みです。
触覚、前庭感覚、固有感覚などの情報を脳がどのように統合するかは、身体の動きだけではなく、情動や行動、周囲との関係にも影響します。
感覚と運動、身体と脳の相互作用という視点は、発達支援を「脳だけの問題」として考えないための重要な切り口となりました。
子どもの行動を変えようとする前に、その子が世界をどのように感じているのかを理解する必要があるのではないでしょうか。
KEYWORDS
感覚統合/触覚/前庭感覚/固有感覚/身体/脳/発達
7 ASDを「治療」と「感覚」の両面から考える
2024年10月19日 健エピネット研究会
ASD新薬+ASDと感覚障害
【YouTube動画埋め込み】
https://youtu.be/1-Pio4Wpgzw
ASDをめぐる新しい治療研究とともに、ASDにみられる感覚特性について考えました。
生物医学的な治療の可能性を探る一方で、本人が世界をどのように感じているのかという感覚の問題にも注目します。
この二つを並べて考えることによって、
「ASDの治療とは、何を変えることを意味するのか」
という、より根本的な問いが生まれます。
困難を軽減することと、その人固有の認知・感覚特性を尊重することを、どのように両立できるでしょうか。
KEYWORDS
ASD/自閉スペクトラム症/感覚障害/治療/神経発達/個人差
8 ニューロダイバーシティを現場へ
2025年1月18日 健エピネット研究会
【YouTube動画埋め込み】
https://youtu.be/rz97p4LN7Jc
ニューロダイバーシティを理念として語るだけではなく、実際の教育や支援の現場でどのように実践できるのかを考えました。
子ども自身を変えることだけではなく、
環境を変える。
周囲の理解を変える。
得意なことを生かせる場をつくる。
こうした発想は、発達支援の主体を「子どもの側」だけに置かない新しい支援観につながります。
「子どもを社会に適応させる」だけでなく、「社会や教育環境を子どもの多様性に適応させる」ことも発達支援ではないでしょうか。
KEYWORDS
ニューロダイバーシティ/教育/社会参加/環境調整/発達支援
9 ASDを代謝から考える
2025年3月15日 健エピネット研究会
ASD治療薬としてのメトホルミン
【YouTube動画埋め込み】
https://youtu.be/uaWsptWoTOc
糖尿病治療薬として知られるメトホルミンとASDとの関連を取り上げました。
ASDを脳だけの問題として捉えるのではなく、代謝、細胞機能、神経発達などを含む全身的な生命現象として考える視点です。
発達を理解するためには、神経科学だけでなく、代謝、生理、免疫、エピジェネティクスなどを含む複数の領域を横断する必要があります。
この講演から生まれる問い
発達の多様性を理解するためには、「脳」と「身体」を分けない生命科学が必要なのではないでしょうか。
KEYWORDS
ASD/メトホルミン/代謝/神経発達/全身性/治療研究
