望月新一教授(京大・数理解析研究所)によって「ABC予想」がいよいよ解決されたということである。これは「a +b=c という自然数の組について、種々の関係が成立する組(詳細略)は、たかだか有限個しか存在しないであろう?」で終わる、数学界で重要な未解決な問題であるという。「存在しないであろう」などという結論は大変奇妙でどうやって証明できたのだろう。望月先生は2012年に全く新しい数学的な手法を使ってこれを解決されたとのことである。これはアインシュタインの相対性理論に匹敵するような、画期的な数学理論で「宇宙数学」というらしい。数学の門外漢にはさっぱり理解できないが、とにかく数学の世界では大変な成果なのであろう。
論文は600頁を越えるもので、インターネットで予備的な論文が投稿された。6年以上の複数の研究者による査読が行われ、誤りがなかったことが認められ、やっと正式に出版されるとのことである。よく分からないが異次元の出来事のようだ。途中で他の数学者からのクレームがあったが、それは無事にクリアできたらしい。
京大の数理解析研究所は日本で唯一の数学の研究機関で、数学界で著明な賞であるフィールズ賞(40歳以下)を二人が受賞しているが、望月先生はこれには興味がなく、あえて取られなかったという。私は以前、京都でゆっくり滞在したいことと、高等数学の世界を覗いてみたいとの望みから、数理解析研の「入門基礎数学講座」を3年間聴講した。案の定、講義が始まるやいなや、数式は完全に理解できなくなり、講師は広い黒板に数式を書き続けていった。
数理解析研究所の隣に基礎物理学研究所があり、訪れたら事務の女性が「湯川先生の部屋」をみられますか?と声を懸けてくれた。よろこんで拝見したが、生前そのままに書物などが保存されており、今でも湯川先生がおられるようであった。そこで「生物物理」という本を見つけてうれしくなった。
基礎物理研究所のかっての所長であった益川先生は、物理学の本よりも数学の本を多く持っていると言われたことを聞いたことがある。物理学と数学との本当の関係は、生物分野の私にはとても理解できない。
蝉時雨数式あふれし大黒板 徹 (12/19/20)