• 2024年5月16日 6:11 AM

環境エピジェネティクス 研究所

Laboratory of Environmental Epigenetics

11.松田洋一教授のこと

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前述の松田教授は北海道大学の染色体研究所(動物染色体研究の大御所の牧野佐二郎先生が創設・松田先生は4代目)の教授でした。あのX染色体不活性化で世界的な業績を挙げられた高木信夫先生も年齢などの関係からか、残念ながらそのポストを継ぐことはありませんでした。松田教授は名大の動物遺伝制御研究室(旧家畜育種;初代教授はニワトリ雛の雌雄鑑別法を確立した増井清東京大学名誉教授・名古屋大学農学部の創設者の一人、二代目が実験動物学を確立した近藤恭司先生)の衰退を憂いて、わざわざ札幌から戻ってこられました。松田先生の若い頃は私とも研究分野が近く(松田教授は放射線、私は化学物質によるマウス生殖細胞の突然変異誘発)、お互いに交流がありました。アメリカ・カナダの国際変異原会議(ICEM)では、松田先生のドライブでナイヤガラの滝を見物したり、先生の留学先であったRoswell 記念研究所を訪問させていただきました。

松田教授のお話では、研究室(育種学教室から分離し現在は鳥類バイオ研究室)の准教授として鈴木孝幸先生を理学部から招いて発生遺伝部門を強化し。また応用動物学科内に「ゲノム・エピゲノム講座」を、九州大学生体防御研究所の佐々木裕之先生(元遺伝研人類遺伝部長)の准教授だった一柳健司さん(名古屋大学理学部・大阪大学理学部大学院)を招くなど、その充実に尽力されたとのことです。もう50年も前に院生当時私が描いていた「発生遺伝学」への構想が松田先生によって着々と実現されつつあるようで頼もしい限りです。松田先生は来年3月末に定年退官されますが、その折には名古屋で大いに飲み、語り合いたいものです。彼の後任は現在選考中とのことで、良い方が教授として跡を継がれることを切望しています。

なお松田教授は昨年新潮選書の「性の進化史」を出版し、毎日出版賞(科学部門)を受賞されました。この賞の第1回の受賞者(文学部門)は谷崎潤一郎氏とのことで、この賞は大変名誉のある賞であるということをお聞きしました。心からの祝意を表したいと思います。