• 2024年5月15日 9:50 PM

環境エピジェネティクス 研究所

Laboratory of Environmental Epigenetics

第10回「ロシア」

 先日、小田原の喫茶店でロシア人の女性と偶然に少し話をすることがあった。彼女は日本に来ているが、何のために日本に来たのかはよく分からない。名前はロシアに多そうなナターシャであった。振り返ってみると、私はロシアの地を2度踏んだが、それは航空会社がまず首都に寄港するという慣例からに過ぎない。

 私は、マルクス経済を勉強したくて、大阪外大のロシア語科に合格したが、その大学には入学しなかったが、ロシアには淡い憧れを持っていた。モスクワの空港には2度降りたが、いずれもビザなしで、正式には入国していない。格安のアエロフロート便でチェコとギリシャ旅行をしたときに、モスクワのシュレメチボ第二空港に到着し、その晩には空港からバスで護送され、モスクワ市内のホテルで泊まった。もちろん私のパスポートには入国のスタンプは押されなかった。

 チェコ旅行ではとても粗末なホテルに宿泊させられ、ライスにウズラの丸焼きだけの夕食を食べた。後で聞くと、一部の客はバスの運転手が、闇で夜のモスクワ観光をしてくれたという。ギリシャ旅行では、正月の厳冬期に銃を持った衛兵に護衛されたホテルに泊まった。いずれの場合にも一泊千円であった。

ギリシャ旅行では、ソ連の経済崩壊に遭遇し、首都の空港でも、ロシアの通貨ルーブルが使用停止となり、飲み物を米ドルで買った経験がある。飲み物は何でも1ドルであった。添乗員さんもよく事態が呑み込めなくてうろうろする中を、前年この空港に来たことがある私は、みんなにビールを調達する余裕があった。

ヨーロッパへの渡航では、最初はアラスカのアンカレッジ経由であったが、その後はロシア上空を経由する航路に変わった。あの広大なロシアの大地は何時間飛行しても。機上からは同じ光景しか目には入って来ない。ロシアの大地は飛行機で飛んでも恐ろしく広い。一度はあの地を自分の足で踏んでみたい。

私は鉄道旅行が好きなので、一度はシベリア鉄道でヨーロッパまで旅をしてみたいと思っている。しかし、これはとても実現する可能性はなさそうだ。時々、シベリア鉄道の路線図を眺めながら、ウオッカをなめるくらいが関の山である。
  マトリーシカに深き罅(ひび)あり春愁ひ   徹    (06/05/20)