• 2024年12月13日 8:41 PM

環境エピジェネティクス 研究所

Laboratory of Environmental Epigenetics

第49回「山下敬吾九段」

 私は下手の横好きで囲碁を楽しんでいるが、碁の才能はないらしくなかなか上達しない。やっとアマ3級程度の棋力で停滞している。囲碁の世界では、定石というものがたくさんある。まずこれを覚えることから囲碁の勉強は始まるのだが、私はこれが大嫌いなので一向に上達しないようだ。

囲碁の世界でも、とっくにAIは人間の棋力を越えてしまっている。プロの棋士たちでもAIばやりのようで、ほとんどがこれを使って勉強しているという。だからまだ序盤だというのに、三々(3の3)に入るなどという手が大いに持てはやされている。昔は序盤でこんな手を打つと師匠に叱られたそうである。AIの隆盛によって、これまでの武宮の宇宙流などの、囲碁の自由さ・闊達さが失われつつあるようで、誠に残念である。

こんな風潮に抵抗している棋士がいる。それが山下敬吾九段である。私は日曜日のNHK囲碁トーナメントを楽しんでいるが、先日の対戦で山下は、白番で4手目に5の5に石を置いた。AIの隅を重視する戦法からは全くかけ離れており、この手には驚いた。その次の上野女流本因坊との対戦では、なんと2手目に天元(9の9)に白石を置いた。どこまでもAI流に対抗しているようで、実に爽快である。対局後の感想では、彼はいずれもこれらの手を自賛していた。

彼は北海道の旭川出身で、師匠はアマチュアでありながら、数人のプロ棋士を育てきた人であるのも珍しい。そして、何と小学2年生でNHKの小学生囲碁大会に優勝している。その時の相手が小6の高尾紳路で、まさかこんなチビに負けるわけはないと思っている内に負けてしまったそうだ。長いNHKの少年囲碁大会で小2のチャンピオンはいまだ山下だけであるという。

山下もかっては本因坊や名人を何回も取ったことがあり、すでに名誉本因坊として、本因坊道策の称号をすでに得ている。また十段以外のタイトルはすべて取ったという経歴がある、しかし、最近は余り戦績が良くなく、昨年などは、名人戦の予選リーグ戦でやっと後半で盛り返し、リーグ戦陥落をやっと免れた。是非もう一度タイトルを取るように頑張ってほしいと思っている。
    碁石打つ音の響きや寒に入る   徹    (03/20/21)