• 2024年6月17日 9:35 AM

環境エピジェネティクス 研究所

Laboratory of Environmental Epigenetics

続澁声徹語 第40回 「五能線」

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 「五能線」には前から乗りたいと思っていた。コロナ禍の中、仙台、盛岡、弘前を巡り、恩師や知人と人生最後の別れと気取った旅を計画した。しかし、すべての方には体調不良を理由に断られてしまった。やはりコロナ出会うことを自粛されたのであろうか。私はいささか無神経だったらしい。

 盛岡から弘前に向かう途中、大舘に立ち寄って時に、別のホームから五能線の列車が出発するところであった。私の持っている切符は五能線経由ではなかったが、車内で精算すればいいと思って、とにかくその2両の列車に乗ってみた。

 五能線の、座席指定の「クマゲラ号」は定員数が少なく、売り切れていて変えないことが二度くらいあった。今度は鈍行だから、弘前まで4時間半かかるという、「乗り鉄」の私でも手強い列車でもあった。

 列車はしばらく進むと、岩が連なった海岸が現れ、小さな漁村が点在していた。この光景は1時間ほど続き、車窓から飽きずに眺めた。降りてこの景色を堪能してみたかったが、次の列車が来るまでに時間がありそうなので、降りられなかった。しかし、車内販売もホームで物を買うことも出来ず、ひもじい旅であった。

私は山も好きなので、本当は途中のどこかでおりて、「白神山地」のブナ林にも行ってみたかったが、簡単列車を降りることが出来ないので、ひたすらその
列車に乗りつづけるしかなかった。五所川原あたりから平地となり、リンゴ園が広がっていた。長かった五能線の列車の旅も終局を迎えたのだ。やっと列車はやっと弘前に到着した。早速売店で缶ビールを買って、一気に飲み干し五能線の旅に祝杯を挙げた。

 私の乗り鉄と景観を見ることは、常にこのように対立関係にある。一方を取れば、一方は諦めなければならない。こんなジレンマを抱えながら、私はまた次の列車旅の案を練っている。しかし、このコロナ禍の最中では、さすがの私も渋々延期しなければならないようだ。残念だが日にちがけがむなしく過ぎてゆく。
だれか早くコロナを止めてくれ。
      漁り船固まりて浮く冬の月   徹  (01/16/21)