• 2024年11月1日 9:12 AM

環境エピジェネティクス 研究所

Laboratory of Environmental Epigenetics

第9回「サグラダ・ファミリア」

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 コロナが世界中に蔓延する直前の2月に、スペインを旅行する機会があった。すでに中国の武漢で発生したコロナウィルスの蔓延が始まっており、中国からの団体客は見当たらなかった、旅慣れた参加者は、中国人がいないことを喜んでいた。旅行は、フィンランドのヘルシンキを経由して、やっと到着したバルセロナから始まった。暖冬で北欧のヘルシンキ空港でも雪を見ることはなかった。

まずお目当ての建設中のGaudiの「サクラダ・ファミリア:聖家族教会」を見学した。これは恐ろしく巨大な石の塊であり、多くのさまざまな形の塔と、おびただしい装飾からなる壮大で奇妙な建築物であった。ガウディーによる詳細な設計図は残されておらず、基本概念しか残されていないという。現在は日本人の彫刻家外尾悦郎氏が建設の総指揮を執っているようだ。建築には力学的な解析での3Dコンピュ―タや、最新の資材やクレーンも活用されており、我々が考えているように、完全に古風な石造りではないのがやや意外だった。

 とにかくこれは巨大な建築物で、かなり下がって見ないとすべてがカメラに入らないほどであった。一体、なぜGaudiはこんな巨大な教会を建築することを考え出したのだろうか。一仏教徒にすぎない私の理解をはるかに超えているのだ。この巨大な建築物はいったい何にために何を表現したいのだろうか?

この教会は約150年間もの長い間建築され続けており、最終的な完成は2026年だということだ。しかし、コロナ禍でさらに何年も遅れることは間違いないだろう。この後、スペインはイタリアに引き続いて、最悪のコロナ禍に見舞われてしまった。私が訪れた時には、こんな過酷な状況がスペイン、いや世界中を襲うことになるなんて予想もできなかった。

 見学者に対して、この教会の警備がとても厳しかった。これは、バルセロナはバスク地区の主要な都市で、バスク独立運動の最大の標的であるからだということだ。旅行者には、壮麗に見える建築物も一皮めくれば、その裏には根強い民族対立が潜んでいるようだ。その歴史を知らないものにとって、折角見学しても、その根底にあるものを知ることは容易には出来ないようだ。
ガウディーの未完の塔や二月尽   徹    (05/29/20)